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いつものようにマリアに会いに行こう。
愛しのマリアは迷惑がっているのが残念だが問題はない。
そんな些細なことは気にしない。
愛しいあの子に会うために、今日も通い慣れた道を上っていく。
一足一足、喜びをかみしめて。
一歩一歩、あの子への想いを噛みしめながら。
そしてたどり着いた目的地。
彼の視線の先にはあの子がいる。
けれど、かけられた言葉はいつものように冷たく。
昼寝をしていたルルが当然のごとく攻撃してきたこともいつものこと。
「なんでここにいるのさ。」
「マリア、運命の再会を果たしたばかりだってのにその挨拶はとても悲しいけど。
でもキミがボクを気にかけていると言うことはとてもよくわかるヨ。
こうして外にいたボクにすぐ気づいてくれたんだから。」
「毎日毎日呼ばれもしないのにやってくる変態ゴキブリバカストーカー相手に?
何が運命の再会だよ。
玄関の前でずっと立ってるし、窓からは丸見えだし、気づかない方がどうかしてるって。
潜ってるときならいざしらず、ここまで待ち伏せするなんてただの変人。
ううん、変人を通り越してただのバカで変態でストーカーだよ。」
「それもこれもキミを想うがゆえなのサ。マイスウィーテスト。」
「あっそう。」
スタスタスタ。愛しのマリアはあっさりとボクを置いていく。
ちょっとばかり切ないものがあるが、愛の前では問題なし。
当然のようについていく。
「なんでついてくるのさ。」
「マリアがいるところだったらどこにだって行くサ。
当然だヨ。」
「買い物行くから邪魔しないで。」
「だったらボクが荷物を持つ。その方がたくさん買えるし、マリアの細い手に重たい荷物を持たせるなんて出来ないヨ。」
「邪魔するなっていったのに。まあいいか。ただし、買い物終わったらさっさと帰れ。
あと荷物持ちいるからあちこち寄るから。」
「いいヨ。マリアの行くところだったらどこにだって行くさ。
たとえ火の中水の中。ゴッキーの群れの中だろうと。」
「いや、頼まれたってそんなところに行く予定ないし。
ってゆうかそんなところまで来るな。行くな、あっちいけ。」
「全く、ボクのマリアはつれないねえ。
まあそんなところがマリアらしくていいんだけど。」
「誰がお前のだって。」
あ、目が怖い。これ以上言うと本気で怒られそうだから止めておこう。
対したことはないとはいえ、あの爆弾を投げつけられるのは勘弁してほしいし。
そういえば前に投げつけられたとき、ヨグの姿を見たような気がしたんだが…まあいい。気にしない。
「アジアン。手伝う気ないならとっとと帰って。」
「ああ!そんなつもりじゃあないヨ。今行くから!!」
そんな微笑ましい会話の中、ようやく露店にたどり着く。
途中、マリアにどつかれたり、どなられたりもしたが。
そういえばこの状況、いわゆるデートではないか?
ああ、出会ってからずいぶん経つが、まさかこんな日が来るなんて。
「ただの荷物持ちだし、デートじゃないし。
すみませーん。これください。」
「マリア…冷たいねえ。」
「アジアンに優しくする理由なんてない。
ほら、荷物持ち。とっととこれ持つ。あと、それから…。」
「ずいぶん買うんだネ。これは食料かい?」
「まあね。最近買い出しあまり行ってなかったからついでに。
結構重たくなるからめんどいけど、仕方ないしね。」
「だったら、買い物に行くときはボクを呼んでくれないか。
マリアの買い物が楽になるし、ボクはマリアとデートが出来る。
何よりマリアと一緒にいれる。これぞ一石三鳥。」
「別に買い出しのたびに来なくて良いし。
何より毎日のようにストーカーしてるのにまだ足りないのかって感じなんだけど。」
「そんなつれないことを…。」
「でも…」
「でも?」
「でもたまにだったら、買い出しに付き合って良いよ。」
「本当かい。マリア!嘘じゃないんだね。
ああ、まさかこんな日が来るなんて。ボクの愛がついに伝わったんだね。
愛しているよ。マリア」
「誰が愛だ。この変態!!」
ゴツン。いい音がした。それもかなり。
マリアの右手が渾身のストレートとしてボクの頭に振る舞われた。
かなり痛い。
「ああもう。荷物持ち!さっさとここから離れるんだから荷物拾って早く来い!
全くアジアンのせいなんだからね!!」
「ああ、待ってよ。マリア~~~~~。」
アジアンは気づいていなかった。
2人の会話に周囲の注目が集まっていたことに。
その中には「お熱いねえ。お二人さん。」だの「可愛いカップルねえ」だの。
さんざんな言葉を投げかけられていたことに。
けれど、マリアと一緒にいれる嬉しさに、些細なことはどうでもいい。
出会ってからずいぶん経つが。一歩前進。
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