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出会ったのは、白い満月が道を照らしていた日。
真っ白な服を着て、誰もいない路地裏で一人歌っていた。
儚くて壊れそうでそっと包んで守ってしまいたくて。
でも、僕の知っている気高い薔薇とはどこか違っている。
キミは誰だい?
・・・・・・・私?・・・私は薔薇のマリア・・・でも今は薔薇はない・・
・・・あなたは・・だあれ?
僕かい?僕の名前はアジアン。一応。昼飯時ってクランのマスター。
キミはマリアローズだろう?
・・・それは元の私の名前・・・今は・・・“薔薇のマリア”・・・
薔薇を無くした・・・堕ちたもの・・
・・無くした薔薇は・・・心の中に・・・
キミはずいぶん難しいことを言うんだネ。
でもなんとなくわかるよ。キミは大事な物をなくしてしまったんだネ。
・・・ええ、とっても大事な物・・・
・・・・でも・・・取り戻せない・・・離れてしまった・・・
寂しい・・つらい・・苦しい・・悲しい・・・
僕じゃあダメかい?
・・・え・・?
僕じゃキミの悲しみを取り除けないかな。
どんなことからもキミを守ってあげると誓う。
キミは僕の世界で僕のすべて。君の居ない世界など考えられない。
・・・・私は、確かにあなたの知っている“マリア”・・
・・薔薇は・・近くて遠い・・・
でも・・私“マリア”も・・やっぱり本来の“マリアローズ”ではないの・・・
私は・・“マリアローズ”の凍った心だから・・・
つらいことが・・あって・・・たくさん失って・・・
だから・・・孤独であるために必要のないかけらを凍らせた・・
何も・・・持ってなければ・・感じなければ・・・苦しむことはない・・
それが・・今の私・・・薔薇を無くした“薔薇のマリア”・・・
・・私は・・・まだ・・・自分の本当の心を・・・溶かせない・・・・
溶かせるさ。
・・・どうして・・そう言えるの・・
キミには何より大事な仲間が、友がいる。
キミは彼らのそばにいたいと言った。僕はそれを後押しした。
彼らのそばにいるキミはとても楽しそうだったよ。
それにキミには僕がいるから大丈夫。
何も心配する事なんてない。
それもこれもキミへの愛ゆえサ。
・・・・・バカ・・
・・でも・・・少し・・・嬉しい・・・ありがとう・・・
え?ちょ・・ちょちょちょ、ママママリアァァ!!!!
それはやばい!やばすぎるって!!!
いい?そう言う顔はホイホイ見せちゃダメだ!
ただでさえキミをつけ回してる奴は多いんだから。
・・・あなたみたいに・・?
そう。僕は常にキミを守って・・・って
いやいや、つけ回してるなんてそんな人聞きの悪い。
ただちょっとキミがどこにいるかな~とか、今日は何をしてるのかな~って
ちょっとした好奇心を・・・
・・・・ストーカーってローズ言ってた・・・
・・・やっぱり・・・変な・・人・・・
ローズ?誰だい?
・・・ローズは“マリアローズ”から生まれた心・・・無くした薔薇・・・
彼女は・・とても明るく強く・・・誇り高い人・・・
そして“マリアローズ”を・・・私を・・・守る人・・・
彼女だって“マリアローズ”であることには・・・変わりないのにね・・・
キミもだろう?
・・・そう、私は・・・“マリアローズ”の仮面。
何も・・感じない・・・人格・・・ただ歌うだけ・・・
そして・・私は“マリアローズ”に最も近い・・・
あなたの知ってる・・”マリア”であり・・・
何も感じない・・“薔薇のマリア”でもある・・・
僕がよく知るマリアと今のキミは何が違うんだい?
・・・同じ・・・
ただ・・月が同じ月で・・ありながら・・欠けていくのと・・・同じ・・
普段は・・・あなたの知ってる・・・マリアになる・・・
でも・・・歌うときは今の私・・・薔薇のマリア・・・
どちらの時も・・・記憶も意志も・・・持ってる・・・・・
でも・・・なぜか・・・話し方・・・考え方・・・
同じはずなのに・・・少し・・・違う・・・
・・・不思議でしょう・・・
いいや。僕にとってはどちらの時も僕の愛しいマリアであることには変わりない。
キミが何であっても、僕はキミを愛していたと断言できるヨ。
キミがキミだから、僕は愛してるんだ。
本当だヨ。マイ・スウィーティスト。
・・・・アジアンって・・・ある意味すごいよね・・
思いこみが激しいというか・・・一途と言うか・・・・
キミのためだったら、僕はなんだって出来るヨ。
一生。言ってれば・・・良い・・・
・・・ああ、もう・・時間・・・戻らなくちゃ・・・マリアに・・
また会えるかな?
・・・歌っていれば・・・いつでも会える・・・
それに・・・私は・・・やっぱりマリア・・・なの・・・
じゃあ、すぐに会えるね。
愛してるよ。マリア。
バーカ。僕はお前のことが嫌いだよ。
まあ、でも。またね、アジアン。
誰もいない路地裏に朝日が差す頃。
黒髪の青年が一人たたずんでいた。
その手に握るのは白い羽根。
けれど、その羽根を光にかざすとあっという間に崩れて風に飛んでいった。
そして今日もまた、彼はいとしいあの子に会いに行く。
マリアと薔薇のマリア。近くて遠いけれど同じ物。
それでも、マリアであることに変わりない。
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