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それは影から飛び出てきた。まわりの闇とは違う異質な黒が徐々に大きくなる。
黒色が赤みを増していき、瞳が深紅の輝きを放つ。
闇は次第に形を作る。それはまるで大きな鳥の姿。
羽を広げると同時に深紅の羽が飛び散っていく。
人よりもはるかに大きいその鳥は、銀蘭のすぐ隣へと舞い降りる。
「主上、お呼びでございますか」
「深夜にすまぬな。蓮花、あやつをうちとれ」
「御意」
蓮花と呼ばれた赤い鳥は、徐々に炎を身にまとう。
その炎の明かりで辺りが照らされてゆく。
そこに現れたのは、まさに朱雀と呼べるもの。
「我が名は蓮花。主が命によりお前を殺す」
「へえ、式神じゃあねえな。おもしれえ、相手になるぜ、蓮花ちゃん」
2人が相まみえる瞬間、結界が音を立てて砕け散った。
「蛇晃!貴様何をしている」
「おお、泰成殿」
「泰成!お前何をしていた。さっさと蛇晃を止めろ!!!」
現れたのは、蛇晃よりもわずかに年上の男性だった。
彼こそ、この家の主であり現在の陰陽師の中で一番の腕を持つもの。
安倍泰成である。
「蛇晃、俺は案内しろと言ったはずだが。それも手荒なことをするなと」
「へーへー、わかってますよ。けどよ、この姉ちゃん楽しそうだったもんでさ。
それにべっぴんさんだし」
「・・・・・・蛇晃、お前しばらく封印されてるか」
本気で怒っている泰成の様子を見て、さすがに蛇晃も慌てた。
「わ~わ~わかりました。おれがわるうございました」
「お前、本当に反省しているのか」
「してますしてます」
そんな会話のなか、冷ややかな声が投げかけられた。
「そなたじゃな、妾の姉様を封じたのは」
それまで、騒ぎ続けていた泰成と蛇晃が銀蘭の方を振り向く。
雲仙と雅家も成り行きを見守っている。
銀蘭のそばでは、いまだに蓮花が警戒の手をゆるめない。
「玉藻の前の妹か。名を伺いたい」
「誰が陰陽師に名乗るものか。ただでさえ人間は我らをしばりつける。
さあ、教えてもらおうか、姉上の封印の解き方を。返答次第ではおぬしを殺す」
屋敷に沈黙が流れる。
誰も言葉を発しようとしなかった。
「それはできない」
「一応、理由を聞こう」
「あの封印は霊界がしたものだ。私がしたのは玉藻の前を縛すること。
私にはあれほどの結界を解く力はない」
「ではおぬしを殺しても意味がないと言うことか」
「そうだ。それでも私を殺したいというなら殺すが良い。お前にはその資格がある」
(お前達、姉妹のつながりを封じてしまったのだから)
「おぬし、妾達のことを知っているのだな。姉様が教えるはずはない・・・だとしたら、過去見か?」
「すまない、のぞき見るつもりはなかった。
主に仇なす以上、お前の姉を許すことは出来なかった。だが封じたことはすまない」
銀蘭は、とても寂しげな顔を浮かべていた。
そこには先ほどまでの冷たい気配はどこにもない。
「そんなことだろうとは思った。邪魔をしたな」
そう言うと、おもむろに歩き始めた。
「銀蘭、どこへゆく」
「姉様が開放できない以上、ここの男に用はない。妾は行かせてもらう。
世話になったな、雲仙」
「まて」
雲仙の手が銀蘭の手をつかむ。
彼女だったら簡単に振り払えるはずなのに、振り払おうとしない。
「しばらく儂のところに来ないか?京を案内しよう。
それにおぬしを姉と再会させると言っただろう。そうだな、銀蘭」
かすかに彼女が笑った。
「そうじゃな、お言葉に甘えさせてもらおう」
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