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今日は一人であそびに行くことにしました。
姉さまはお出かけしてるし、蓮花はお家でお仕事をしているのでこっそりお出かけしようと思います。
くらまだって一人でだいじょうぶって言ってるのに、姉さまたち信じてくれないんだもの。
帰ってきたら、続きの日記を書くことにします。
でも一人はちょっと寂しいので羽樹を一緒に連れて行きます。
ちょっと遠出してお山の向こうに行きます。
そして取り残された日記帳は保護者の手によって発見された。
「・・・・‥それで、あれから何時間たったの?」
「4時間ほど。」
「帰ったらお説教ね。」
蜜羽(みつは)がその少女に出会ったのは偶然であった。
その少女、否、最初は少女だと思いもしなかった。
最初の印象は―――人形。
長い銀髪をリボンでくくった金色の目を持った人形が、これまたクマのヌイグルミを抱えて切り株に座っていた。
しかも、身につけているのは高価なドレス。決して野ざらしにしていいものではない。
後に彼女は『もしかしたら持って帰ってたかもしれない。
だって、捨てたり売ったりするのもったいなかったし。』と語ったという。
「・・・・‥どこからか盗んできて、放置した?まさかね。」
さすがに気になって近寄ってみたとき、目線があった。
蜜羽が顔をのぞき込むと、瞬きをしている。
おまけにちょっとクマを持ち上げてみたりしている。
そしてとどめを刺した。
「だあれ?」
鈴のような声で、その人形。いや、少女はそう言った。
一瞬遅れて蜜羽の悲鳴が聞こえた。周囲の鳥が一斉に逃げた。
「へえ、一人で遊びにねえ。悪かったよ。悲鳴あげたりして。」
「ううん、気にしてないの。なれてる。」
「はあ?なんかよくわかんないねえ。まあいいかって何してんのさ。」
みると少女は蜜羽の茶色の髪に視線をおくっている。
「羽樹の色と同じ。」
「羽樹・・・・ってまさかそのクマ?本当に変わった子だねえ。名前、なんて言うの。」
「蔵馬、この子は羽樹。あなたのお名前なあに?」
「あたしは蜜羽。あんた妖孤でしょ?なんでこんなところうろついてるの。」
妖孤。長い年月を経た狐が変化した妖怪。その知名度は高く、また妖力も高い。
けれど、数年前にある妖孤が反乱を起こしたあげくに全滅したとされている。
生き残りの割には警戒心がないというか、トロイというか。
妖孤は美形が多くて奴隷としても価値が高いから、こんな綺麗どころ見つからない方がおかしいんだけど。
「あそびにきたの」
「いや、それは聞いたって。妖孤って全滅したんでしょ?
なのになんであんたはこんなところでうろついてるの?」
「…ぜんめつ?蔵馬は知らない。姉さまと一緒だったから。
だから蔵馬は覚えていないし、知る気もないの。」
「まあよくわかんないけどさ、こんなところでうろつかない方が良いよ。
大体、何してたのさ。こんなところでボケッーと座ってて。」
「何するか考えてたの。ここまで来たの始めてだったし。」
「ふうん・・・・・あんたどこから来たの?」
「あっち。」
そう言って指さしたのは山の向こう。
はっきり言って遊びに来るところじゃない。
「あんた結構大物ねえ…でもさあ、もうすぐ夕方だけど帰らなくて平気なの?」
「もう・・・・夕方?」
「ほら、よく見なさいよ。太陽沈むわよ。」
「・・・・・・・・・帰らないと。」
「ちょっと待ちなさいって。一人じゃ危ないわよ。仕方がないからついてってあげる。」
「・・・どう、して・・・?」
「どうせ私は根無し草。どこいったって同じよ。ああ、ついでに夕飯くらいごちそうしてくれたら嬉しいな。あと、言い訳の手伝いぐらいしてあげる。」
「何で・・・・そこまでしてくれるの?」
きょとんと首をかしげている。
そういう姿を見るとさっきの人形めいた姿は薄れていく。
はっきり言ってこっちのほうが好き。
「そうねえ・・・なんでかな。面倒見そんなに良い方じゃないんだけどねえ。
う~ん、友達になれそうだったからじゃだめ?」
「・・・・・・とも、だち。」
「そ、友達。うん、そうしましょ。今日から私たちは友達だよ。蔵馬。」
「蓮花や羽樹みたいに?」
「蓮花って誰か知らないけど、まあ、そんなところかな。」
「友達・・・・蔵馬の友達の蜜羽。蜜羽の友達は蔵馬・・・嬉しい。」
そう言ってニッコリ笑う。
これはもう可愛い。可愛いなんてものじゃあない。
なんか良い掘り出し物見つけたって感じ?
「さ、早く行くよ。案内ちゃんとしてよ。」
「うん、大丈夫。羽樹、大きくなって。」
「へ?」
その翌日、ある里に不思議な怪談話が広まった。
その話がすぐに消えたのはある理由がある。現実離れしていたからだ。
目撃者の話によると。――
『2メートルくらいのクマが二足歩行し、さらに全速力で走っていた。
おまけにその肩に無表情な銀髪の女の子と、『行けー全速力でつっぱしれー』と見るからに楽しそうと言うか、ノリノリの茶髪の女の子が座っていてあっという間に山の向こうに姿を消した。』
怪談話としてはすぐに消えたが、すぐに実話として蘇った。
なぜなら、2人の少女がワンセットで行動するようになり、目撃者がさらに増えたからである。
仲良くなっていく2人が巻き起こした騒動は、また別の話であった。
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