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ガーディアン 『もしも』



 木竜のイタズラ好きはそれこそよく知っている。
木霊ドリーがそうだったが、なぜか木の資質を持つ者はイタズラ好きが多い。
多いと言っても全員がそうだとは限らない。
現にキーニやカラナ、ロットは悪戯をすることはほとんどない。
上2人のイタズラぶりを見て、これ以上迷惑をかけられないと思っているようだが。
それはともかく、イタズラに巻き込まれるのはよくあることだった。
ドリーの実験に巻き込まれたことも、ノイたちの新種の被害にあうことも。。
けれどドリーと離れ、ノイたちが反省して実験をやらなくなったため最近はまったくそう言うことがなかった。
だから、油断した。

「・・・・・・服があわない。」

木竜術士カディオ。ただ今の性別♀。
今日のお仕事 風竜術士家での寄り合い。


「あれえ、カディオ。その姿ってノイさんとロイくんのイタズラ?」
「あっさりと言われても困るが、大体あってる。」

幸か不幸か、最初に会ったのはお隣さんでもあるミリュウだった。
家に入ってきたカディオを見て、それがカディオだと言うことを認識してようやく尋ねた。
そもそものきっかけはロイたちが作ったおもしろ植物。
本人たちは作っただけで、カディオに食べさせる気は全くなかったらしい。
と言うよりもカディオに見つからないようにしていたのだから、食べてもらってはこまる。
本来の効力は『性別を変える』ではなく、『年齢を変える』のはず。
だが、作った物を誤ってカディオが食べてしまった。
その結果が今の姿。
女性になったため体つきが細くなり、身長まで小さくなったのは誤算だった。
おかげで着ていた服が全然合わない。

「そんな服持ってたんだね。よく似合ってるよ。」
「さすがにノイたちの服は着れなくてな。家にあったのを適当に持ってきた。」

カディオの服は緑色のローブだった。
正装姿に似ていなくもないが、あれより生地が多く、まさしく魔法使いと言えそうだ。
ちなみにあまりに女装(?)が似合っていて、カラナやロットは大喜びしたが他の三人はかなり微妙な顔をしていた。

「へえ、カディオが作ったの?」
「いや、友人が前に送ってきたやつでな。
着る機会がないからいらないとは言ってたんだが、まさかこういう使い道が出来るとは思わなかった。」
「友人って、カディオが外の居場所を教えた人のことなのかい?」
「いや、俺はだれにも教えてない。・・・・教える相手はもういないから。
精霊の友人たちだよ。あいつらはここのこと知ってるから。」
「そっか。でもさあ、せっかくもらったなら着ないとダメだよ。」
「あいつら凝り性だからな。普段着にはむかないさ。」

すると風がカディオのローブをなびかせる。
まるで怒っているようだ。“たまには着てくれたっていいじゃない”と。
そう考えて、少しだけ笑う。
滅多に会えないがほとんど変わっていない。きっと今会っても同じ事を言うに違いない。

「なんか楽しそうだね。んで、それいつ治るの?」
「どうも解毒がうまくいかなくてな。まあ一日たてば治るからこのままにしておいた。」
「そっか。いやあ、きっとみんな驚くよ。カディオ美人だし。」
「あのなあ・・・・」

驚くだけではすまなかった。

「・・・・‥カディオさん・・・・ですよね?」
「お前、今度はなにやらかした。」
「あの子たちも困った者ねえ。」
「・・・・ウム。」
「まあ、カディオさん。とってもお綺麗ですわ。」
「ええ、元が男だったのに、こっちが不機嫌になるくらいにねえ。」
「エレ!その手をおろしてくれ!!俺だってなりたくてなったわけじゃない!!」

 一部不穏な空気を漂わせながらも、本人が大したことはないというので特に何事もなくその場は終わった。ただ一人をのぞいて。
ちなみにその日の寄り合いが宴会場になったのは言うまでもない。
もちろん、ネタはカディオで決まりである。
どうにか酔っぱらいを部屋に追いやったが、まだ飲み足りないと騒ぐミリュウの相手を押しつけられ、仕方なく部屋に連れて行く。


「でもさあ、ちょっと惜しいよね。その新種の果物。成功してたらおもしろいことできるんじゃない?」
「あいつらに余計なことを吹き込むな。大体、被害にあってるのは俺よりお前の方だろ。」
「いやー、なんかさ。もったいないし、それに興味あるからつい。」
「ついじゃない!まったく、多少胃が丈夫だって限度があるだろう。
俺みたいに姿が変わったらどうする気だ。」
「それなんだけどさ、カディオ。僕の女装姿見たくない?」
「・・・・・・・さっさと寝ろ。この酔っぱらい。」

ガシッと肩をつかんでベッドに押し込む。
毎度の事ながら、酔っぱらいの相手は疲れる。
自分の部屋に戻ろうとしたとき、何かに手を掴まれベッドに倒れ込んだ。

「ミリュウ!なにするんだ!!」
「一緒に寝よ。」
「・・・・は?」

放心している僅かな間にベッドの中に押し込まれる。
おまけにがっちり掴まれているから抜け出せそうにない。
ただでさえ、体力ではミリュウに勝てないのに女の姿ではさらに勝てない。

「お前なあ・・・・。」
「いいじゃない。こんな機会滅多にないし。昔は一緒に寝たりしたでしょ。」
「居候してたときのあれか?あれはお前が潜り込んできたからだろ。」
「ふーん。まあそう言うことにしておこうか。」
「なんだ?その意味深な言い方は。」
「まあまあ。気にしない。それにしても、女性になったらちょっと小さくなっちゃったね。
ボクより身長低いよね。カディオ見下ろせるなんて新鮮。」
「お前、昔は俺より身長伸びて欲しいって言ってたからなあ。」
「今でも思ってるよ。もうちょっとなんだけどなー。」
「あのな、今抜いてるんだからいいんじゃないか。」
「戻っちゃったらボクより高いでしょ。」
「それもそうだな・・・・。」

少しだけ、沈黙が広がる。
そんなとき、思ってしまった。『もしも』の話。

「なあ、もし俺が本当に女だったらどうする?」
「へ?」
「もしもの話だよ。」
「そうだな・・・・今と変わらないんじゃないかな。
ボクはカディオが女でも男でも好きだよ。」
「・・・まったく、かなわんな。」
「え?何か言った?」
「なんでもない。サッサと寝ろ。ミリュウ。明日は宴会の片づけもあるしな。」
「はいはい、おやすみ。カディオ。」
「お休み。ミリュウ」


もしもの話。けれど形が変わっても、その思いは変わらない。
寝過ごした2人が、エレに見つかって怖い思いをしたのも変わらない。
ちなみにカディオが元に戻ったのは三日後だったらしい。

 

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