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雨だった。ここ数日続く雨はいっこうにやむ気配がない。
でも買い出しに行かなきゃ行けないのは事実で、買い出しが終わったらなるべく早く帰りたい。ってか帰りたい。
「だから、ボクは早く帰りたいんだ」
深紅の髪を持つ侵入者、マリアローズは人気のない路地裏でそうつぶやいていた。
地面にしゃがみ込んで何かを覆っている。
「ずぶぬれになるのは嫌だし、風邪も引く」
声をかけているらしいが、その姿はどこにもない。
いや、その足下で何かが動いていた。
「だから、ボクはもう行くよ。君もさっさと雨の当たらない場所に行くんだね」
そういって名残惜しそうにきびすを返す。
だが、すぐに立ち止まった。
「ついてくるんじゃないの」
「ミャア・・・」
路地裏からでてきたのは、生まれて間もない子猫だった。
「だからついてくるなっていったじゃないかーーーーーーー!!!!」
「どこからつれてきたんや。それ」
「うるさい、黙れ。不可抗力だよ」
「ミャア」
マリアのマントに埋もれ、両手にしっかりと抱きかかえられているのは小さな子猫だった。
それも泥だらけになっていて元の色がわからない。
「二人ともずぶぬれじゃないの。お風呂わかしたから入ってきなしゃい」
「そだね。この猫については後で考える」
「ミャアア」
急にマリアの腕から逃れようとした猫をがっちりと押さえつける。
「だめだよ。逃がさないからね。ずぶぬれのままでうろうろされるのは非常に迷惑だ。
君がついてきた以上これは義務だ」
「猫にマジに説教せんでもええんとちゃう?」
「うるさい、半魚人。
あ、だめだよ。お前、確かにこいつは魚だけど、半魚人だから食べてもきっと美味しくないから」
「ミャア」
「せやな、きっと堅くて筋肉多くて食いづらい・・・じゃなくて!ワイは半魚人やあらへん。
自分も返事すな!」
「ミャウ」
「いいからさっさと風呂に入ってこい。風邪を引くぞ」
「はーい」
マリアローズが風呂に行くころには居間にみんなが集まっていた。
「それにしても、マリアが猫を拾ってくるとは思わなかったな」
「・・・マリアは優しいから、見過ごせなかったんだと思います」
「ちょうね~。でもあのミーちゃんもずっとちゅいてきたみたい。
マリアのこと、気に入ったのかしら。」
バシャ。フミャアア~。ドゴ。
仲間たちがくつろいでいるころ、風呂場では静かな死闘が繰り広げられていた。
洗面器の中には逃げようとする小さな子猫、それをなんとか洗おうとするマリアローズとの
華麗なる戦いが始まっていた。
「動くな、じっとしてろ!」
「ミャアミャア」
猫はその小さな体を必死にばたつかせる。
だが、所詮は小さな猫。あっというまにつかまって洗われていく。
泥まみれだった体が徐々に元の色を取り戻していくと、ある事実がわかった。
「お前、メスだったんだ。それにけっこうきれいな毛並みしてるじゃん」
薄い金の毛並みに、黒い波が走っている。
三毛猫らしいが何かの血が入っているんだろう。
おまけに、その瞳がすごかった。
右の目には毛並みよりも濃い金色の瞳。左の目には森を思わせる緑の瞳。
「けっこう美人だね」
「ミャー」
ほぼ洗い終えることには猫は静かになっていた。
体を拭くときには2回戦が始まりはしたが。
余談だが、この猫ずいぶんマリアになついて離れない。
何度追い返しても戻ってくる。
数時間の格闘と、仲間(主にユリカ&サフィニア)の援護もあり、無事にマリアに引き取られた。
命名ルル
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