ついていない時は、本当についていない。
        みんなで仕事に行って、目的地の地下湖に行ったまではいい。
        だけどフリークスに襲われたあげくに、湖に落ちるなんて…それも僕が危ないと判断したカタリが突き落としたせいだ。
        そりゃあ確かに狙われたのは本当だけど爆弾投げようとしたときに、いきなりタックルされた身にもなれってんだ。
        もちろん、カタリにはばっちり報復しておいたけど。
        てゆうかあれくれいじゃ足りなかったかも知れない。
        風邪が治ったら絶対何か奢らせよう。ユリカ達も誘って。うん、それがいい。
        それもうんと高い物がいいな。当然デザート付き。
        モンブランが良いな。甘い栗をほおばって。
        それともチーズスフレがいいかな。口の中に入れた瞬間サッと溶けて、チーズの香りが広がるの。
        あと、何が良いかな。
       
        『魚に奢らせるってのも同感、デザート付きも当然。
        その点に関しては賛成だけどね。まず風邪治さなきゃケーキなんて無理だよ。』
       
        わかってるって。こういうとき同じ身体を共有してるって不便だよね。
        これじゃあローズも外出れないでしょ。
       
        『私は別にかまわないんだけどさ。やばくない？
        熱さっきより絶対上がってると思う。
        あ、そうだ。私と変わればまだ楽になると思うから、お粥でも作ってあげる。』
       
        あ～････ううん。だいじょぶ。寝ていれば治るから。
        もうちょっとしたら起きれるから、ローズは何もしなくていいよ。
        だから心配しないで。
       
        『でもさあ、ルルのご飯だって用意しないといけないし。』
       
        ルルはちゃんと自分でどうにかしてるよ。
        本当に大丈夫だから、ローズもしばらく寝ていたら？
        起きれるようになったら起こすから。
       
        『しょうがないなあ････後で絶対に起こしてよ。
        お休み、マリア。はやくよくなってね。』
       
        うん、後でね。
        ････････････…寝たのかな？
        よかった。ローズには悪いけど････ただでさえ体調悪いときに仕事増やされたくないからなあ。
        そこらのフリークスやチンピラなんかあっさりと倒せるぐらいに強いのに、なんで家事は苦手なんだろうなあ。
       
        ミャア～
       
        ････ルル？ああ、心配してくれてるんだね。
        でも、うつっちゃダメだからこっちに来ちゃダメだよ。
        大丈夫だって。こら、ホッペタなめちゃダメ。くすぐったいから。
        そんな悲しそうな顔しないで、本当に大丈夫だから････良い子にしていて。
        ほら、友達が呼んでるから行っておいで。
        こんな高いところに来てくれる友達なんだから、大事にしないとだめだよ。
        大丈夫。すぐよくなるから。
       
        ミャア････
       
        パタン。小さなルルの姿が扉の向こうに消えた。
        それを確認してホッとため息をつく。
        ････ちょっと可愛そうだったかな。
        でも、子どものルルに風邪移したくないし。
        治ったらいっぱい遊んであげよう。
        ････････････眠い。
        ちょっとだけ寝ていよう。ちょっと寝たら････きっとよくなってる。
       
       
       
        ････静かだな。
        ルル、まだ帰ってないんだ。なんだろなんだか気持ちいい。
        ヒンヤリしてて････どこか温かい。
        ････誰？
        目を開けようとしたら、そっと手のひらをかぶせられた。
        細くて真っ白な手。
        ローズじゃないのはわかってる。
        ましてやＺＯＯのみんなじゃないって事も。
        ････・なんでいるのさ。
        馬鹿な奴。移ったって知らないよ。
        移るのなら本望だって？････きみってホントーにバカ。
        あのさ、聞きたいんだけどなんでここにいるの？
        一応言っておくけど不法侵入なんだからね。
        ････ルルが？
        仲良しの黒猫と一緒にやってきて離れようとしなかった？
        そう････普段仲悪い癖に。
        でもさ、一応礼を言っておく。
        だけどこんなのこれっきりだからね。
        ････なに。
        良くなったら一緒にお茶でもしないかって？
        なんで僕がそんなことしなくちゃいけないのさ。
        いやだ。めんどい。だるい。
        ････････････まあ、でも奢ってくれるんならつきあってもいいよ。
        はあ？なにがデートだって。
        バカ言うのもたいがいにしろ。この変態馬鹿ゴキブリストーカー野郎。
        ････だめだ。いつもの調子が出ない。
        無理するなって？だったら何もしないでさっさと帰れ。
        看病してくれたことを百歩譲って礼は言うけど、精神的に参るんだよ。
        愛の前には問題なし？一生言ってろ。
        あ～もう、うるさいうるさい。
        僕は寝る。絶対寝るから起こすな、騒ぐな。
        そうしたほうがいいって？だったら話しかけないで。
        ････なんで枕元に来るのさ。
        寝るまで見張ってる？無理しないように？
        ････やっぱ帰れ。
        ああ、でもその手だけは置いていって。
        温かくて気持ちいい。
        ････なに、手が冷たいからそう感じるんじゃないかって？
        そんなのどうでもいいよ。
        まるで････
        まるで、ゆりかごの中にいるような気分だ。
        優しくて温かいところ。
        ････馬鹿みたい。
        もう寝る。絶対寝るからね。
        ルルが帰ってきたら起こして。
        ････おやすみ、アジアン。