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たまり場となってしまった雲仙の屋敷で、皆が集まり宴会になっていた。
雲仙は吉明と意気投合し、先ほどからすさまじい量の酒を飲んでいる。
泰成はそうそうに酔いつぶれ、蛇晃と雅家にからかわれている。
先ほどまで雅家の笛に合わせて舞っていた銀蘭は、酔っぱらい達をやりすごし、お酒とつまみを確保したかと思うと、部屋を出て縁側へと腰を下ろした。
そばには蓮花と桜麗がいた。彼女たちも自分の分は確保している。
満月を見ながら女達の宴が始まった。
「いや~~~~まだ飲むの~~~」
「いいからやめておきなさい、桜麗。あなたお酒は弱いじゃない。」
「桜麗、程々にしておかぬと明日がつらいのじゃからな。」
元は精霊である以上、少女だからといって見かけ通りの年齢とは限らない。
しかし、桜麗は本当にお酒に弱かった。少し飲んだだけで顔が赤くなっている。
笑いながら桜麗のお酒を取り上げ、つまみのお菓子を彼女の前に置く。
とたんに機嫌を直してお菓子を食べ始めた。
「銀蘭様。お酌いたしますわ。」
「すまぬな。」
自分は余り飲まない蓮花は、主人の給仕に専念している。
しかし侮れないことに、蓮花は酒にはやたらと強い。
ただ余り飲まないだけである。
「ふにゃ~~~銀蘭様~なんかグルグルする。」
「やはり酔ったな。寝ていてよいぞ、桜麗。」
「う~そうする~」
酔いつぶれた桜麗は、銀蘭の膝にもたれかかるとすやすやと寝入ってしまう。
見かねた蓮花が部屋に寝かせてこようかと言ったが、銀蘭は起こすのがかわいそうだから
しばらくこのままでいいと取り合わない。
銀蘭は、二守にはとても優しかった。
「おやおや、桜麗はおやすみですか。それでは守としての役目は果たせないのでは?」
先ほどまで雲仙と飲んでいたはずの吉明が、銀蘭たちの元へとやってきた。
部屋の奥では酔いつぶれた雲仙の姿がある。
他の人もほとんどが寝入っていた。
「桜麗とて、何かおこれば目を覚ます。常に緊張していては疲れるからな。
それに妾は守ってほしくて守の契約をしたわけではない。」
「では何のために?」
「なぜそなたにそれを言わねばならぬ?
そなたのように、正体を見せぬやつには特に言いたくはない」
吉明がうっすらと笑った。
「お気づきでしたか。」
「わからぬと思うたか?あれだけの真言で雨を呼ぶことは出来ぬ。
そなたは泰成の術に力を貸しただけじゃ。
力の媒介となったのはあの蒼い童子。じゃがあれの正体は竜。
ただの人間が易々と竜を呼べるものか、ましてやそれを従えるなぞと。」
「最初から見破られていたと言うことですか。」
「そなたは目立ちすぎるのじゃよ。それにそなたは妾と同じ匂いがする。」
笑顔を浮かべていた吉明が、目を見張る。
彼の目には、自分を見据える銀蘭の姿が映る。
「そなたは妖狐の血につながるもの。それゆえに妾に近い。」
「それは・・・・」
銀蘭が吉明を問いつめようとしたとき、屋敷に光が放たれた。
その光のまぶしさに寝ていた人間が起きてきた。
光の正体はまぶしく光る球体。まるで太陽が顔を出したようだった。
球体は少しずつ形を変え、男の姿となる。
その衣装は古代の衣装。腰には剣を差している。
「我が名は伊耶那岐神。そなたたちの助けを借りたい。」
「古代の神が何用じゃ?そなたの役目はとうにすんだはずじゃ。」
銀蘭は1人静かに神の前に立つ。まるで彼女自身が巫女のようだった。
「伊耶那美神が蘇った。彼女は国津神と手を組みこの世を黄泉へと変えようとしている。
彼女を止めてほしい。」
「儂は神話は詳しくないんだがな。要するにそなたの言うイザナミとやらをとめればいいのだな。
では協力しよう。」
「う、雲仙殿・・・そんな簡単に言うんですか・・・」
「何を言うか、困ったときはお互い様と言うではないか。」
1人勝手に話を進める雲仙に、さすがの蛇晃も脱力しきっている。
雅家は呆気にとられ、泰成はうなだれている。吉明はかすかに笑っている。
蓮花と桜麗が、目を丸くしている。
「このおっさんが言うと一気に話が世間話になるよな・・・」
まるで夫婦げんかの仲裁に入ったように感じられる。
「いやあ、じつにおもしろい方だ。」
その様子を黙ってみていた銀蘭は、ふと雲仙の方へ目をやる。
「雲仙。それがそなたの望みか?」
「黄泉に変えるとかいっていたからな。ようするに死者の国のことであろう?
儂はそうなってほしくはないからな。だからこの方に協力しようと思う。
反対するか?銀蘭」
「いいや。それがそなたの望みなら妾はかなえよう。」
うっすらと銀蘭が笑う。彼女の目が金色に光ったように見えた。
「そなたは妾の主なのだから。」
同時刻。京を見渡す山の上に人影が見えた。
黒いマントに全身を包み、文様の書かれた白い仮面をつけている。
仮面の向こうに、強いまなざしの紫の瞳が見える。
その体つきから男だと言うことがかろうじてわかる。
「おもしろいことになりそうだな。まあ、俺には関係ないが。」
「紫鳥(しどり)、行くよ」
上空から声がした。見ると漆黒の翼を持った女性の姿が目に入る。
黒の覆面をして、黒の装束をまとっている。
「ああ、今行くぜ。」
その言葉と同時に、男の背中から漆黒の翼が広がる。
地面を蹴ると一気に舞い上がった。
「今回は監視だけなんだからね。よけいなことしないでよ。」
「わかってるさ。うるさい女だぜ。」
「アンタが今朝から姿を消してたでしょ。
まったく昨日別任務から戻ったばかりだって言うのに。
何か気になるものでもあった?」
「いや、別に。」
「そう?ならいいけど。」
空を飛びながら、女の小言を聞き流し、昼間の光景を思い出す。
内裏で監視をしていたときに銀蘭と呼ばれる黒い髪の娘を見た。
傷を負いながらも、それでも美しかった。
彼女のことが頭から離れない。。
(クソっ、どうかしてるぜ)
そのことを追い払うかのように、紫鳥は速度を上げ空の闇へと消えていった。
自分が女のことを気にするなんてあり得ないはずなのだから。
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