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40お題 「たとえキミが何者でも~かわらないもの~」



        フワリ、フワリ、クルッ。
        フワリ、フワリ、クルッ。
        フワリ、フワリ、ピタッ。
       
        「…いつまで…見てるの…?」
        「やあ邪魔するつもりはなかったんだよ。マリア」
       
        静まりかえった広場で、一人で踊っていたときに不意に気配を感じた。
        あいつがいると。
       
        「…昼も夜も…見てて…疲れない…?」
        「愛するキミを見るのにどうして疲れるかって?
        むしろボクは会えない時間こそが苦しくて切なくて、すぐに会いに行きたくなるものサ。」
        「ふうん……。」
       
        フワリ、フワリ、クルッ…タン、タタン。タン。
       
        静かに回っているのを止めて、つま先を立ててステップを刻む。
        うん、まだいける。
        猫のように軽やかに、蝶のようにひらひらと。
        歌うのが好きで、踊るのが好きで。
        褒められるのが嬉しくて、いつも踊っていた。
        ああ、今日はとても良い気分。
        私の心に反応して、飛べない羽が静かに広がる。
        飛ぶことのできない。ただ存在するだけの羽。
        でも、私はこの羽が好きだった。
       
        「今度はダンスかい?キミは音楽とか踊りが好きなんだネ。」
        「…キミ…じゃない…私たち…よ。」
       
        昼の時はいつものマリア。歌うときは今の私が出現するが基本は同じ一人。
        どちらの時も意識と記憶は共有できる。
        私は“夜”。マリアは“昼”
        景色が変わってもそこにある空は変わらないのと同じ。
        だから、私が踊りや歌が好きなのはマリアも好きだと言うこと。
        どっちの姿でもあまり踊らなくなってしまったけど…
        フワリと動きに反応して羽が小さく揺れた。
       
        「いつ見ても綺麗な羽だネ。僕はそれを見るのが好きだヨ。」
        「自分だって…持ってる…くせに。」
       
        私たちは意識を共有する。
        昼やローズと違って指揮や戦闘が出来ない私は表に出ることはないが。
        それでも見たこと。感じたこと。痛みや悲しみ。
        私たちはすべてを共有する。
        別人格となるローズと違い、私たちはあくまで一つだから。
        そしてその中で、私たちは見てしまった。
        同じ羽でありながら、その役割を存分に発揮できる羽を。
        漆黒の闇を思わせるようなあの翼を。
       
        「あるけどキミのほうが綺麗だと思うネ。
        まあキミの一部がそれなら、なんだろうとボクは好ましく思う。
        前にも言ったろう?キミがなんであろうとボクはキミが好きなんだからサ。」
        「人じゃ…ない…かもしれないのに…?」
       
        別人格がいるのはともかく、羽があるっていうのは普通じゃない。
        歌は昔はまだ普通…普通だったのかな。
        あまり昔のことはよく思い出せない。
        いっぱい楽しかった記憶があるのに、それを思い出そうとすると思い出せない。
        母さんと父さんの動かなかった体。
        かわいらしい笑顔を引きつらせて死んだ友達。
        優しい記憶はもう忘れてしまった。
       
        「と言っても。
        キミよりボクのほうが人って言えないような状態なんだけどネ。」
        「…たしかにね…。」
       
        世の中奇人変人魚人間いくらでもいるけれど。
        腕から変な触手みたいのでたり、羽はえたりししてるのは確かにおかしい。
       
        「だからサ、キミがなんであろうと関係はないと思うネ。
        どんな姿になってもボクはキミを見分ける自信があるし。」
        「…どんなに…なっても…?」
        「そう、キミへの愛ゆえに絶対にわかるサ。
        何になってもキミがキミだってことは変わらない。
        ボクたちの愛という名の絆の前にはどんな力もかなわないサ!」
        「…勝手に…いれない…」
       
        …こいつ全然変わらない。
        羽があっても、別人格がいたことを知っても全然変わらない。
        いつもと一緒。
       
        「ちなみにマリア。ボクが人じゃなかったらどうする?」
        「…かわんないよ。アジアンはアジアンだし…
        しつこくて、迷惑で…うっとおしい…やつ」
        「それはないだろうマリア!迷惑なんてとんでもない。
        全てはキミを想うがゆえサ!!」
        「…一人で…言ってて…」
       
        勝手に暴走仕始めたのはおいておいて、軽やかにステップを刻む。
        タンタタンタンタタン。
        ステップにあわせてひらりと舞って、少しずつ手も動かしていく。
        タタンタンタンタタ。
        なぜだか今日はとっても気分が良い。
        普段はあまり歌わないけれど、今日は歌ってもいい。
        遠い昔に憶えた懐かしい歌を。
       
        「歌ってく…けど…聞いていく…?」
        「もちろん。キミの歌は大好きだヨ。」
       
        たった一人を観客に、私は一人歌い始める。
        正体とかそんなものは気にしない。
        今このとき、私の前にいるのはただのアジアン。
        そして私はただの“薔薇のマリア”
        それだけはきっと何があっても変わらない。
       
       
        …ところで、ボディガードさん…
        一人増やしたって…言ったほうがいいのかな?
        …まだだめ?…驚かすって?
        …まあ二人が…そう言うなら私はいいよ…
        教えるときが…楽しみ…だね。

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